クールな王太子の新妻への溺愛誓約

そして、マリアンヌの手を取ると優しく引き寄せた。


「――レオン様?」


突然のことでマリアンヌは事態を飲み込めない。レオンの腕に抱かれていることが信じられなかった。

まるで別の生き物のように心臓が大きく弾む。それを宥める術は、マリアンヌ自身でもわからなかった。


「結婚を取りやめるつもりはない」


レオンがきっぱりと言い切る。


「……本当ですか?」


聞き返したマリアンヌにレオンは頷いた。

マリアンヌの顔が、パッと花が咲いたように明るくなる。
そばに置いてもらえるのならそれだけでいい。自分がどこの誰であろうが。出生の真実よりレオンと一緒にいられることの方が、今のマリアンヌにとってはなによりも大事なことだった。


「では、なぜピエトーネへ?」


マリアンヌは別の疑問をレオンへぶつけた。


「ピエトーネの国王夫妻に会って確かめたいことがある」


レオンの瞳に力が込められる。
ベティに聞いたこと以外で、ふたりからどんな話を聞こうというのか。マリアンヌにはレオンの真意が掴めなかった。

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