クールな王太子の新妻への溺愛誓約

「そういえば……」


ヴァネッサが不意に立ち上がる。


「マリアンヌが倒れていた場所に残されていたものが……」


持ってくると言い置き、ヴァネッサは慌てた様子で謁見の間から出た。

残された三人は、静かな空間の中に身を置いていた。

ピエトーネの“マリアンヌ”だと信じて疑わず、マリアンヌはこれまで思い悩むことなく生きてきた。それが覆されていく。途方もない心細さがマリアンヌの肩にのしかかった。

しばらくして戻ったヴァネッサは、手に小さな布切れを持っていた。それをレオンへ差し出す。


「これがマリアンヌのそばに落ちていました」


それは白いハンカチのようだった。血痕なのか、ところどころが薄っすらと茶褐色になっている。

レオンはそれを広げ、カッと目を見開いた。


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