クールな王太子の新妻への溺愛誓約

「……間違いない」


そうぽつりと呟き、マリアンヌを見る。


「マリアンヌはクレアだ」


レオンの眼差しは、マリアンヌが胸を痛めるくらいに切なかった。


「これは、私がクレアにあげたハンカチだ」


そう言ってそれをマリアンヌに見せる。バラの刺繍が施されていた。
そのハンカチを手に取り、マリアンヌが凝視する。

(……これはレオン様がクレア様に差し上げたもの。そしてそれは、私が倒れていたところに落ちていた……)

マリアンヌはハンカチをぎゅっと握りしめた。
レオンの話だけじゃない。マリアンヌがクレアだという物的証拠も出てきた。疑う余地がどこにもなくなったのだ。

ただその事実を突きつけられても、マリアンヌはそう簡単に頭も心も切り替えられずに複雑な表情を浮かべている。

突然、自分が本当は別の国の王女だったのだと言われて、『そうなのね』と納得できるものではない。

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