クールな王太子の新妻への溺愛誓約

意地悪く言っているつもりは彼女にはないのだ。
それがわかっているから、マリアンヌもそれ以上は問いただせない。


「それで、次はどこを案内してくれるの?」


気を取り直してベティを促した。

ベティもそれでハッとしたようにして、「こちらでございます」と隣のドアを開けた。
するとそこは湯浴み場らしく、大理石でできた立派な浴槽が見えた。大人ふたりが悠に入れる大きさだ。
その隣のドアは応接室。革張りの立派なソファセットが真ん中にあった。マホガニーのテーブルには、ローズウッドやチューリップウッドで装飾が施されている。ラッカー塗装か、飴色に光っていた。

とにかく目に入るもの全てが想像以上に豪華で、マリアンヌの口から出るのはため息ばかりだ。

ひと通り案内を済ませると、ベティはワゴンの上でお茶の準備を始めた。エメラルドグリーンが美しいティーセットにも金彩がふんだんに使われ、見るからに高級そうだ。

マリアンヌは窓辺にある三人掛けのソファへ腰を下ろし、振り返って窓の外を眺める。半月が昇り、庭園に銀色の光を伸ばしていた。
昼間は当然ながら、夜であっても庭園の美しさが変わることはない。それどころか月明かりで艶めいた景色となっている。

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