クールな王太子の新妻への溺愛誓約
マリアンヌは、本当にすごいところへ来てしまったのだとしみじみ思った。
ベティの説明によると宮殿は東と西で分かれており、東館は王族の居住地区、西館には侍従や大臣の部屋や公務を行なう執務室が設けられているそうだ。
総部屋数はざっと八百。ピエトーネの宮殿の五倍以上だ。中央部分には大ホールやオペラハウスもあり、二ヶ月に一度そこで舞踏会が開かれるらしい。
マリアンヌの部屋として与えられたのは、東館の三階の一角。レオンも同じ階に部屋があるそうだ。
「マリアンヌ様、どうぞ」
ベティがマリアンヌへティーカップを手渡すと、甘く高貴な香りが鼻をくすぐる。カップには花びらがいくつか浮かんでいた。
「これはなんの花?」
「バラでございます。ピエトーネよりお持ちしたマリアンヌ様お気に入りの紅茶に、イングリッシュローズの花びらを浮かべてみました」
「まぁ、イングリッシュローズ?」
マリアンヌの顔がパッと華やいだことに気をよくしたベティは、少し得意そうに「この王宮の庭園で栽培しているそうです」と言った。