クールな王太子の新妻への溺愛誓約
◇◇◇
「――アンヌ様? マリアンヌ様」
マリアンヌが名前を呼ばれていることに気づいたのは、ベティに軽く肩を揺すられてからだった。自室のソファに座り、まんじりともしないまま。どこを見ているわけでもない目はうつろ。心ここにあらずといった様子だった。
そんなマリアンヌの様子をベティが心配そうな顔で見つめる。
「どうかなさったんですか? さきほどから何度もお呼びしておりますのに」
レオンに送られて部屋へ戻ってきてからというもの、マリアンヌはずっと呆けたようにしていたのだ。
「あ、ご、ごめんね」
レオンとのキスがマリアンヌを現実世界から遠ざけていたが、ベティによってようやく夢見心地から覚めた。マリアンヌが慌てて取り繕ったような笑顔を浮かべる。
「レオン様となにかございましたか?」
「――え!?」
必要以上に大きな声を上げる。