クールな王太子の新妻への溺愛誓約

マリアンヌはソファに座ったまま、ベティから逃れるように顔を遠ざける。そこで体勢を崩し、ソファの背もたれに倒れ込んだ。

ベティの真っ直ぐな目を前にすると、マリアンヌはどうしてもタジタジになってしまう。詮索されると黙っていられなくなるのだ。
言うものかと厳重に鍵をかけたはずの口が緩み、喉の奥の方から“隠しワード”がじりじりとせり上ってきた。


「マリアンヌ様?」


言えとばかりに催促され、マリアンヌは観念するしかなかった。


「……キ、キ……」

「キキ?」


ベティが間合いを詰める。
マリアンヌは息を大きく吸い込み、それを吐き出すとともに……。


「キス!」


叫ぶように言った。

ベティの目が点になり、その後左右に揺れる。マリアンヌの放った単語を頭の中でゆっくり咀嚼でもしているようだった。

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