クールな王太子の新妻への溺愛誓約

ベティは口をあんぐりと開けたまま、瞬きをすることも忘れたように呆けている。
しばらく待ってみてもベティの金縛り状態が解けないので、マリアンヌは「驚いたでしょ?」と声をかけてみた。

それが動き出すきっかけになったか、ベティは口を即座に閉じ、いつもの冷静な顔を作る。そして、マリアンヌへとゆっくり視線を向けた。


「そんな大変なお話を聞かされて、マリアンヌ様は大丈夫ですか?」


慈愛に満ちたベティの目を見て、鼻の奥がツンとする。
気を張っていたのかもしれない。優しい言葉をかけられて、心の強張りが瞬間和らぐ。


「……うん、ありがとう、ベティ」


それでもなんとか涙はこらえた。
マリアンヌのそんな様子に気づいたベティが、マリアンヌの手を強く握る。


「戸惑われて当然なのに、マリアンヌ様はなんとお強いのでしょう」

取り乱すことのないマリアンヌを見て、ベティは感心してしまった。
ただ、ベティはマリアンヌを買いかぶり過ぎかもしれない。本音では未だに戸惑っているから。それを懸命に隠しているだけのこと。

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