クールな王太子の新妻への溺愛誓約

第三者にそう言われると、余計に照れ臭い。自分の頬に触れると、カッと熱を持ったのを感じた。


「だから余計に、クレアの時の記憶を思い出したいの」

「ですが、すでに七年も失ったままのものを今さら取り戻せるのでしょうか」


マリアンヌの顔が曇る。

(やっぱり無理なのことなのかしら……)

絶対に思い出してみせると思っていたが、ベティに不可能に近いようなことを言われると、途端に不安になる。

それに気づいたベティは、「あ、いえ。きっと大丈夫でございますよ」と慌てて言い直した。


「ピエトーネに居続けていたのでは難しいかもしれませんが、レオン殿下のおそばにいらっしゃるのですから。少しずつ思い出されるに違いありません」


ベティが明るい顔ではっきり言う。


「……そうかな」

「ええ、そうでございますよ」

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