クールな王太子の新妻への溺愛誓約

「ダメだ」


レオンは体を硬くするマリアンヌを容赦なく抱きすくめる。

それを見ていたベティは、「し、失礼いたします」と部屋からそそくさと出ていった。邪魔はできないというよりは、恥ずかしくて見ていられないというところだろう。

その途端、マリアンヌは体から力を抜く。ふたりきりならば、恥ずかしがることなく素直に身を任せられる。レオンの背中にそっと手を回すと、レオンはさらにマリアンヌをきつく抱き留めた。


「よし、元気回復だ」


おどけるように言ったレオンはマリアンヌを引き離すと、手にしていた白い紙袋を差し出した。


「……これは?」

「メイの揚げパンだ」

「――え!? メイの!?」


どうして彼女の揚げパンがここにあるのか。レオンは政務でずっと王宮に詰めていたはず。
マリアンヌは目を瞬かせた。

< 168 / 286 >

この作品をシェア

pagetop