クールな王太子の新妻への溺愛誓約
「ダメだ」
レオンは体を硬くするマリアンヌを容赦なく抱きすくめる。
それを見ていたベティは、「し、失礼いたします」と部屋からそそくさと出ていった。邪魔はできないというよりは、恥ずかしくて見ていられないというところだろう。
その途端、マリアンヌは体から力を抜く。ふたりきりならば、恥ずかしがることなく素直に身を任せられる。レオンの背中にそっと手を回すと、レオンはさらにマリアンヌをきつく抱き留めた。
「よし、元気回復だ」
おどけるように言ったレオンはマリアンヌを引き離すと、手にしていた白い紙袋を差し出した。
「……これは?」
「メイの揚げパンだ」
「――え!? メイの!?」
どうして彼女の揚げパンがここにあるのか。レオンは政務でずっと王宮に詰めていたはず。
マリアンヌは目を瞬かせた。