クールな王太子の新妻への溺愛誓約

◇◇◇

翌朝、朝食の席にレオンの姿はなかった。

アンニバーレとヴァネッサはフィアーコの国王夫妻との四人で別の場所でとっているため、自分はレオンとふたりかと思っていたマリアンヌは肩透かしをされたようだった。
両親は食事の後、自国ピエトーネへ帰ることになっている。次に会うのは二ヶ月後の婚礼の儀の時だ。

テーブルにはマリアンヌの物ひとり分だけが用意されていて、レオンは最初からこの場へ来る予定はなかったとみえる。

(残念だわ。バラ園のことを聞いてみたかったのに……)

マリアンヌは寂しげにテーブルへ着いた。


「レオン様はいつもどちらでお食事を召し上がっていられるの?」


給仕をしてくれた者にマリアンヌが尋ねると、「レオン殿下の自室でございます」との答えが返る。

「いつもおひとりで?」

「さようでございます」


自国のピエトーネでは家族で食事をすることが常だった。国王である父が政務でいない時ももちろんあったが、『家族は食事を共にすべき』という父の教えに従い、特別な用事のない時は全員が顔を揃えていたものだ。

自分と比べ、家族との関係が希薄に思えるレオンをマリアンヌは不憫に思ってしまった。

(これからは一緒にお食事をしたいと、後でレオン様に伝えてみようかしら)

マリアンヌは今後のことをあれこれと考えながら、黙々と朝食を食べ終えた。

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