クールな王太子の新妻への溺愛誓約
◇◇◇
「マリアンヌ、息災でいるんですよ」
宮殿の前に停められた銀色の馬車の前で、マリアンヌは両親としばしの別れを惜しんでいた。
「お父様もお母様も、どうかお体を大切に」
両親とはこれから二ヶ月間会うことは叶わない。
「マリアンヌ……」
名前を呼んだまま、ヴァネッサがそこで言葉を止める。なにか言いたいが躊躇っているようにも見えた。
「……お母様?」
不審に思いつつマリアンヌが首を傾げる。
「……いえ、がんばるのですよ、マリアンヌ。私たちの心はいつもマリアンヌのそばにありますからね」
ヴァネッサは気を取り直したように笑顔を浮かべ、マリアンヌの手をギュッと握る。その顔が泣き笑いになっていることに、ヴァネッサは気づいていなかった。