クールな王太子の新妻への溺愛誓約
それぞれと長く抱擁をし、マリアンヌは馬車が見えなくなるまでその場に立った。
いよいよ視界から消えると、急に心細さが忍び寄る。それを悟ったベティは「これからも私がマリアンヌ様のおそばにおりますから。どうか悲しいお顔はなさらないでください」と、心強い言葉をくれた。
マリアンヌはそれが嬉しく、ベティの手を握り「よろしくね」と笑顔を繕った。
「マリアンヌ様、お庭をお散歩しませんか?」
ベティの誘いにマリアンヌがパッと顔を輝かせる。
実は昨日、馬車でやってくる途中に見えた素晴らしい庭園がとても気になっていたのだ。レオンのバラ園も覗いてみたい。
「そうね、ぜひ行きたいわ」
マリアンヌはふたつ返事だった。
宮殿を背にし、庭園の左側からベティに案内されて歩く。ベティはたったの一泊で庭の案内をできるまでになったのかと、マリアンヌは昨夜同様に感心していた。
馬車から見た時にも感じたが、これだけ広大な敷地なのにチリひとつ葉っぱひとつ落ちていない。風が吹けば葉っぱの一枚や二枚舞って当然だというのに。そこかしこに掃除の達人が潜んでいるのではないかと思ってしまった。