クールな王太子の新妻への溺愛誓約

「わかっています! ですが、もしもここでモンタリスクの王太子を手にかけてしまえば、モンタリスクと戦争になってしまいます」

「心配しなくとも、フィアーコが負けることはない」

「それはわかっています!」


モンタリスクは大陸随一の小国。フィアーコに敵う兵力があるはずもない。


「そうなれば、モンタリスクの国民からも多くの犠牲者が出るのです。穏やかに慎ましく暮らしてきた民から……。そんなことはしたくありません」


マートと過ごしたここ二ヶ月がクレアの頭に蘇っていく。
初めて対面した時に、頬を赤らめて照れ臭そうに挨拶をしたマート。クレアの淹れた紅茶を『おいしいおいしい』と言って飲んだマート。いつも穏やかな眼差しで、クレアを見てくれていた。

真のマートの姿は、そっちだったはず。今回の愚行は確かに許されたものではないが、マートにもう一度だけチャンスを与えてほしい。

それになにより、レオンの美しい手を血に染めたくない。
クレアは、その一心だった。

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