クールな王太子の新妻への溺愛誓約

マートの部屋の前に警護の者がふたりいたのは、外からの敵じゃなく、内の敵を見張るためのものだったのだ。

マートはクレアを連れ出すために、その警護たちをベティ同様に眠らせ、クレアの部屋の前に詰めていたコスナーもまた同じだった。レオンに用事を頼まれたというのは、方便だったのだ。

馬に乗っていた騎士団がレオンに新たな剣を手渡す。それを受け取ったレオンは、マートへにじり寄った。

(……なにをするつもり? まさか……!)

レオンが剣を振り上げる。
それと同時に、クレアは迷わずレオンの前へ両手を広げて立ちはだかった。


「――クレア!?」

「レオン様、どうかおやめください!」


クレアは、マートをかばったのだ。
クレアのうしろでマートが「クレア様……?」と小さな声を漏らす。


「どういうつもりだ、クレア。その者は私を殺めようとしたばかりか、クレアを連れ去ろうと企んだんだぞ」


レオンは剣を振り上げたまま、目を鋭くした。

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