クールな王太子の新妻への溺愛誓約

「救われた命を今後、モンタリスクの民のために使え。それがマート、お前への罰だ。もしもそれが実行に移されない場合は、次こそ容赦なく首を斬る」


レオンはそう言いながらヒュンと音を立てて剣で空を切った。

つまり、マートは今回のことに関して罪に問わないということだ。大陸流しや強制労働。そういった罰を負わせないと。マートへの最大限の恩情だった。
そしてクレアがなによりも嬉しかったのは、レオンが『民のために使え』とマートに命じたことだ。国民との関係が希薄に見えたレオンが、そう考えられるようになったことは、クレアの心を弾ませた。


「よいな? マート」


レオンは低い声でマートを厳しく問いただす。しかしその目には、どこか優しさが滲んでいるように思えた。


「……はい」


レオンの気持ちが伝わったか、レオンを見上げたマートの目は真っ直ぐだった。

< 262 / 286 >

この作品をシェア

pagetop