クールな王太子の新妻への溺愛誓約
「怖い? いいえ、全然」
マリアンヌは首を横に振った。
つれない素振りに戸惑うことはあっても、恐怖を感じたことは一度もない。
「この王宮で、私がなんと呼ばれているか知っているのか」
「はい。“氷の王太子”だと伺いました」
躊躇うことなく正直に答える。ただ、レオン本人の耳にまで入っているとは思いもしなく、それに関してマリアンヌは驚いてしまった。
「知っているならなおのこと。私にあまり構わない方がいい」
レオンはいぶかし気に眉をひそめるが、マリアンヌは「いやです」ときっぱりと言い放った。
「さきほども申し上げましたが、私はレオン様の妻となる身。レオン様のことを怖いとは思いません。それに、今はただ笑うことを忘れてしまっただけですから」
レオンは、ただマリアンヌをじっと見つめた。怒っているのか嘆いているのか、レオンがなにを思っているのかマリアンヌにはわからない。