クールな王太子の新妻への溺愛誓約

マリアンヌはレオンのそばに立った。
尻込みひとつせずレオンの頬に両手を伸ばす。


「ほら、こうして口角を上げてみてください」


彼の頬を軽くつねるようにして口角を持ち上げる。
レオンは振り払うことも忘れてしまったか、マリアンヌにされるがままだ。


「こうしたら、とても素敵な笑顔です」


微笑みを浮かべてレオンを見つめる。

(本当に美しいお顔……)

マリアンヌは至近距離で見たレオンの顔に、内心ではどぎまぎしていた。
時が経つのも忘れ彼の頬に触れていると、ふっとレオンの表情が和らいだように見えた。

(……今、笑ってくださった?)

レオンは鼻から息を漏らすようにして、確かに今、笑みを浮かべたのだ。本人にその自覚があったのかどうかは定かではないが。

マリアンヌは顔からパッと手を離した。


「マリアンヌは変わった女だな」

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