クールな王太子の新妻への溺愛誓約
(――キャッ……!)
お尻から床に飛び込む体勢になる。もがくように出したマリアンヌの手が宙を掻いたその時――。
引き上げられるように手が掴まれ、その次の瞬間にはレオンに腰を強く抱き寄せられた。
細身だとばかり思っていたレオンの胸板の厚さに、マリアンヌは頬がカッと熱くなる。すぐに体を引き離されても、動き始めた鼓動は速まるいっぽう。
「気をつけろ」
レオンの声が冷えたホールに低く響く。
「……はい」
マリアンヌはそう言うだけで精一杯だった。
「行くぞ」
「は、はい」
先を歩くレオンをマリアンヌは追いかけた。
回廊にふたり分の足音が響く。
真夜中のレオンとの予期せぬ時間は、マリアンヌの心を温かくしながらもざわつかせていた。