わたしがまだ姫と呼ばれていたころ
今日はいろんなことがいっぺんにあって、夢みたいな日だった。
疲れたので少し早いけどもう寝よう、と思い、姫はベッドに入った。
そして、先生からもらった小箱をバッグから取り出した。
そっと開けると、中には古めかしい小さな瓶がひとつ、ころんと入っていた。
掌にすっぽり入ってしまうほど小さな茶色い遮光瓶。
姫は右の掌に握り、その上から左手を重ねると、大切なものを抱きしめるように胸にぎゅっと押し当ててみた。
胸がドキドキしている。鼻から思いっきり空気を吸い込む。
胸がいっぱいって、きっとこんな感じだろう。
ゆっくり瓶の栓を開けると、きゅっと音がして懐かしい香りがふわっと辺りに立ち込めた。