わたしがまだ姫と呼ばれていたころ
episode8 タロット占い

その昔、わたしがまだ姫と呼ばれていたころの話。

そのころ、大学の女子寮では、姫のタロット占いの的中率が評判になっていた。
姫のタロット歴は、中学生のころからなので五年あまり。
高校の文化祭で「占い館」をしたところ、行列ができるほどの人気だったこともあり、姫もある程度の自信を持っていた。

年頃の女子が占ってほしいこと、と言ったらまず恋愛だろう。
バレンタインまで一ヶ月を切っており、姫の部屋には連日連夜、恋する乙女たちが押し寄せてきた。

的中率アップには、まず何よりも相談者の質問が具体的であることが望ましい。
「今年の恋愛運をみてほしい」とか、「わたし、しあわせになれますか」とか、そんなあいまいな質問には、あいまいな答えしか返ってこないだろう。

「この前、合コンで知り合ったD大のカレとつきあいたいの。どういうアプローチがいいかな」とか、「カレ、最近会ってくれないの。他に好きな人がいるんじゃないかしら」とか……。
こういう質問だと、答えも具体的に出易いものだ。


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