あなたの運命の人に逢わせてあげます

だが、美咲があわてて言った。

「違うの!……あたし……病気のために妊娠しても、子どもが産めないかもしれないんだ……」

美咲の病気は、今では日常生活にはほとんど支障がないものの、妊娠しにくい上に、たとえ妊娠できたとしても数値をコントロールして出産に臨まなければならないらしい。

新卒で入った会社を辞めるくらいなので、もし「不治の病」だと告げられたらどうしようかと思ったが、命に関わるようなものではないと言う。

まぁ、美咲には先刻(さっき)、かなりなことをしたけど、まったく問題なさそうだったがな。

彼女の夫はバツイチで、前妻との間に息子と娘がいるので、夫からは殊更に子どもを望まれていないらしい。

「……あたしの小学校の頃の夢ね……魚住くんのお嫁さんになって……魚住くんの子どもを産むことだったんだよ……あの頃、まさか自分が母親になれないなんて……夢にも思わなかったなぁ……」

彼女はおれの腕の中で、(うた)うように言った。

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