あなたの運命の人に逢わせてあげます

「旦那とは別れるんだな?」

おれは念を押した。

「時間、かかるかもしれないけど」

そう言いながらも、美咲はしっかり肯いた。

「でも、親の反対押し切って結婚して、今度は魚住くんと一緒になるために離婚するんじゃ、もう実家とは絶縁状態だね」

美咲は首を(すく)めた。

「本当に身ひとつで魚住くんのとこへ行くことになると思うけど……それでもいい?」

美咲は上目遣いで尋ねた。

「もちろんさ」

おれは即答した。
美咲を抱きしめる手に力を込めた。

「おまえこそ、おれの給料じゃ、バレエとかやってる今のような生活はできなくなるぞ……いいのか?」

おれが訊き返すと、美咲は表情を引き締めて、神妙な面持(おもも)ちでこくっと肯いた。

美咲が既婚者に見えなかったのは、まったく生活感のないその風貌にもある。
それは、小さな会社というが、彼女の夫の経済力の賜物だろう。

おれもますます仕事をがんばらなきゃな、と腹の底から思った。

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