あなたの運命の人に逢わせてあげます
「ところで……泳げるようになった?」
今までの口調とは一変させて、美咲がおどけたように尋ねてきた。
「なんだよ、いきなり」
美咲は悪戯っぽく笑っていた。
「あたしね、小学生のとき、泳げない魚住くんが海で溺れたら助けてあげなくっちゃ、って思って、スイミングスクールに通ったんだよ」
そういえば、おれが早々にやめたスイミングスクールに彼女は通い続けていた。
「なんで、プールじゃなくて『海』なんだよ」
おれたちは海のない県で生まれているため、怪訝に思ったおれは訊いた。
「そういえばそうだね……なんで『海』なのかな?」
美咲は首を傾げたが、すぐ気を取り直して、
「とにかくあたしね、おかげで一キロメートル泳げるようになったの」
と言って、得意げな顔をした。
「……じゃあ、おれが溺れたら、絶対助けろよ」
おれは不貞腐れながらも堂々と言った。
「あーやっぱり、まだ、泳げないんだぁー⁉︎」
美咲ははしゃいだ声をあげた。
ムッとしたおれは美咲に覆いかぶさり、馬乗りになる。