不機嫌なジェミニ
私が会場に入ってノンアルコールの飲み物をもらっていると、隣にジンさんがスッと立ち、シャンパンを2つ頼んで、私に手渡してくれる。

「乾杯だけ、一緒にして」

と言ってグラスを合わせてくる。
今日のジンさんはタキシード姿に耳にプラチナで出来た透かし彫りのイヤーカフをつけている。
レンさんと間違われるれないようにかな…
男性用のようで少し存在感があるもの。
色っぽくて、よく似合う。

「お誕生日おめでとうございます」

と私が顔を赤くして言うと、

「ありがとう。今晩は一緒にいられなくて残念だよ」

と少し微笑んで、私の顔をみる。

「あ、あの、プレゼントにネクタイを選んだんですけど…会えなかったから…」

「そうか。ありがとう。
1週間後にはトウコも22歳の誕生日だね」

と言いながら、私の首元の金色のチェーンを引き出し、蝶々のチャームをブラウスの上に出してパールのネックレスと重ね付けにし、満足そうに微笑む。

「この方がいい」

私も、華やかになるとは思ったんだけど…
なんとなく恥ずかしくて、服の上につけることが出来なかった。

「…はい」

「トウコ、1週間早いけど…」

と言いながら、私の片方の耳に髪をかけ、
そっと耳の上にヒヤリとしたものを留めつけた感触がある。

「トウコ、可愛い」

と、飲み物のカウンターの奥の鏡に私を向けて映し出す。
私の耳の上に小さな金色の蝶々が止まっている。

「わ、可愛い」

と思わず声が出る。
イヤーカフだ。

「蝶々の羽の透し模様。ネックレスと俺のカフもお揃い」

「…ありがとうございます」

とふたりで遠い鏡を見つめる。


「ジン、お客様。」と蘭子さんが呼びにくる。

じゃ、帰ったら電話する。
とそっと耳元で囁いて離れて行った。

視線の先には華やかなモデルさん達がジンさんを呼んでいる。


私は髪を直してカフが見えないようにしてから少しため息をついて、受付に戻った。








< 117 / 159 >

この作品をシェア

pagetop