不機嫌なジェミニ
その次の週の金曜日。

今週は会えるだろう?とジンさんに言われ
上手く断る事が出来なかった。

どうしよう…

仕事を早く終わらせ、ジンさんに見つからないように帰ろうと、
「お先に失礼します。」と小声でいってDの部屋を出ると、
突然後ろからリュックを掴まれ、ガクンと足がとまる。

「キャウ!」と可笑しな声がでてしまい、
振り返ると顔をしかめたジンさんが私のリュックを掴んでいる。


「やっぱ、犬」とジンさんの隣にいたセイジさんがクスクス笑う。

…今の声は出したくて出した訳じゃないです。


「どこに行く?週末は部屋にくる予定だろう」

「…あ、えーと」とモゴモゴ言うと

「ちょっと来い」 とそのまま、私のお腹に腕を回してもちあげ、スタスタ歩き出す。

つま先がブランと揺れる。
…私の足が床に付いていませんけど…

「ジンさん、それって誘拐。」

とセイジさんは小声で呟くけど
ジンさんは聞こえないふりでエレベーターの上のボタンを押し、
やって来たエレベーターに乗り込む。

エレベーターの中にはレンさんと山岸さんが乗っていた。

「こんばんわ。トウコちゃん」と山岸さんは落ち着いた声を出す。

「ジン、最近そういうプレイが流行ってるのか?」とレンさんが喉の奥で笑っている。

「俺は機嫌が悪い」

「乱暴はするなよ」

「するか!」

「なら、いい。トウコちゃん、身の危険を感じてるならついて行くけど…」

「…だ、大丈夫かと」と抱き上げられたまま、ジンさんを見上げると

「あたりまえだ。話があるだけだ。」
とストンと私をAの会議室の前に下ろし、先に立って入っていく。

私がそっとついていくと、レンさんと山岸さんも一緒にに会議室に入った。

「なんでおまえらも入ってくんだよ!」

「面白そうだから」
とレンさんはクスクス笑ってドアの内側に寄りかかり、山岸さんの肩に腕を回した。

…ふたりとも面白がってる…



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