不機嫌なジェミニ
ジンさんが部屋に入って来て、

「なんだ、さっきの叫び声は?」

と言ったけど、
破れたペンケースと、私がハトコを掴んでいるのを見て、

「ピンが折れたのか?
怪我しなかったか?」と聞くので

セイジさんと私がウンウン頷くと

「やっぱ、古いから付け直しておいた方が良かったなあ。だから、寄越せって言ったのに…トウコ、ピンバッチにしておくか?」とハトコを掴んで、裏を確認している。

…直しておきたかったから、『交換』って言っていたの?

「じ、ジンさん、そこに『J』って書いてあります。…ジンさんが作ったんですか?」

と掠れた声で聞くと、

「最初に作って、大学の学園祭に出した中のひとつ」と笑う。

「わ…私が…ずっとそれを持ってたんですか?」

「そうなるな。
…ハトじゃなくて、ヒバリのつもりだけど…」

とハトこを撫でてわらう。

嘘お…

「トウコが気に入ってくれて良かったよ。
ペンケース買い直して来いよ。
『ハトこ』は直しといてやるから…」

ジンさんは何もなかったようにハトこを持って部屋を出て行った。

「やっぱり、運命ってあるんだな。
…敵う(かなう)わけがない。」

とセイジさんが呟く。

私は驚きすぎて
ただただジンさん出て行ったドアを見ていた。


おしまい。
< 151 / 159 >

この作品をシェア

pagetop