不機嫌なジェミニ
お昼をとうに過ぎた14時の『マッキンレー』は午後お茶を楽しむお客さんがパラパラいる。

「いらっしゃい」と微笑むマスターの横で
細身で柔らい笑顔の女性がエプロンをつけて微笑んでいた。

『クマさんと清楚な花。』って感じだろうか?


「こんにちは。トウコちゃん、マスターと奥さんの瞳(ひとみ)さんだよ。
今日の定食って何?」とセイジさんが私に教えてくれ、

「チキンのトマト煮。と鯖の味噌煮。」とマスターが答える。

「僕はチキン。トウコちゃんは?」

「マスター先ほどはおさわがせしました。鯖をください。」と言うと、

「あなたがジンくんのお気に入りのトウコちゃん?」と奥さんが楽しそうに私の顔を覗く。

「べ、別にお気に入りってわけじゃあ…」と俯くと、

「やっぱそうかー。
さっきのジンさん、トウコちゃんに近づくなオーラが出てたもんなあ。」
とため息をついてキッチン前のカウンターに座った。

「何言ってるんですか?ジンさんは私で遊んでるだけです。
小型犬って言って、髪をぐしゃぐしゃにするし…」と不機嫌な顔で呟くと

「今のところジンくんのペット。って感じかな」とマスターは豪快に笑う。

いや、ペットって人間じゃないし…

「武蔵くん、(ムサシ。マスターの名前らしい。)笑いすぎ。トウコちゃんに失礼でしょ。」と美人がマスターを睨む。

「ゴメン、瞳ちゃん。怒らないで。」と謝りながら髪を撫でている。


おふたりのラブラブはわかったけど…

…もしもーし、私の不機嫌よりヒトミさんの機嫌が大切って事?



「夫婦2人でいちゃいちゃしてないで、ランチ作ってー。」とセイジさんも呆れる。

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