不機嫌なジェミニ
「トウコ、着いたぞ。」と髪をくしゃくしゃされて目を覚ますと、屋内の駐車場に車が停められたみたいだ。

ジンさんの住む部屋の駐車場かな。

「…はい。」とボンヤリ身体を起こしてシートベルトを外そうとすると、

「トウコ、頭が熱いぞ。どうした?」と肩を掴まれ、ジンさんの大きな手が私の額に当てられる。

「…寝てたからあったかくなったんだと思いますよ。」とジンさんお手をどけようとすると、

「そうじゃないな。これって熱が出てるだろ。公園で冷えたんじゃないか?」と怖い顔で私の顔を見る。

「大丈夫ですよ。解熱剤も持ってるし…」
とリュックを後ろの座席から取り出そうと後ろを振り返ると、結構、頭が痛かった。

風邪かな?と思いながらリュックの中から解熱剤を取り出して口に放り込んで、入れてあったミネラルウオーターで流しこむ。

「このまま病院行く。」とジンさんがエンジンをかけようとしたので、

「だっ、大丈夫です。
元々丈夫だし…でも、今日は帰ったほうが良さそうですね。」と言ってドアの外に出ると、

「こら、どこに行く?」と追いかけて来たジンさんに腕を掴まれると、フラフラと腕の中に入ってしまった。

「じ、ジンさん、離してください。」とますます赤くなって腕をぬけ出ようとすると、

「病人のくせにワガママ言うな。このまま担がれたいのか?」と怖い声で耳元で言われ、固まると、

「予定より早めだが仕方がない。今日はうちに泊まれ。」と肩を抱いて歩き出す。

え?

「かっ、帰りますっ!」と言うと、

「おまえ、オトコがいたことないだろ。
ふつーは男の車でぐっすり眠った時点で、何があっても、合意の上だ。」

えっ?何があっても合意って?

ええ?
…それって
ヒトには言えないような事ですか!?

「確かに眠ってしまいましたが、合意はしていませんっ!」と力んで立ち止まると、

「今日のところは許してやるから、とりあえず、俺の部屋で休め。」

とジンさんはくすんと笑って頭をポンと撫で、

「襲わない。約束する」

と真面目な顔で私の肩を抱いて、マンション入り口と表示されたドアに向かった。
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