不機嫌なジェミニ
「ところで、トウコちゃんはジンさんの事ってどう思ってるのかな」と恭子さんが急に私に向き直る。

突然、会話が振られてドキッとするけど…

それはもちろん

「えっ、あの、尊敬してます。ジュエリーデザイナーとして憧れの人でもありますし…」と言うと、

「俺は尊敬はいらない。」とジンさんがふてくされた顔を見せ、

「尊敬するにはワガママすぎるんじゃないか？」とレンさん。

「…尊敬とあこがれ…私も最初はそうだった…かな」と恭子さんが意味深に微笑み、

「お茶を淹れましょうか」と立ち上がってキッチンに入っていった。


「手伝います！」と立ち上がろうとすると、ジンさんに肩を押さえられ、

「今日は座ってろ。元気になったら、今日の分も後から働け。」と私の食器も持って立ち上がる。

「大人の言うことは聞いておいてね。それにジンは誰にでも優しいわけじゃないよ」とレンさんも言って、私の肩をポンと叩いて立ち上がってしまった。

私はポカンとレンさんを見送る。

…ジンさんは仕事以外ではいつでも優しいけど？

とりあえず、

「ありがとうございます。元気になったら、ご期待に添えるように頑張ります！」と大声で言うと、

「本当か？あまり期待せずに待つよ。」

とキッチンからジンさんの疑い深そうな声がして、レンさんと恭子さんの笑い声がした。
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