不機嫌なジェミニ
鏡に向かってボンヤリ着替えていると、ジンさんが吸った鎖骨の上にはくっきりと赤いアザが出来ていた。

これってキスマークっていうんだよね。

さっき、予約って言ってた。
『恋』をする予約。って出来るんだろうか?

私はジンさんを尊敬してる。もちろん、憧れてもいる。

それはジュエリーデザイナーをしているジンさんに対してだ。

でも、髪をくしゃくしゃと撫でられたり、

あの切れ長の瞳ににっこり覗き込まれると、すごくドキドキしてしまう。

回される腕に、見つめられる瞳に、

どうしていいかわからないほど慌ててしまう自分がいる。

今までの男性に持つ淡い気持ちなんて比べ物にならないほど、

こんな風に心を揺らされる事なんて、今までの私にはなかった事だ。


これは『恋』なのかな?



私は俯いてジンさんに手を引かれ、部屋を後にする。

衣類も化粧品も次に来た時に使えばいい。と荷物は置いていくようにいわれたけど、
衣類は自分で洗いたいと言って持ち帰らせてもらった。
次に来る時に持ってきます。と思わず、口が滑り、
ジンさんは待ってる。と口の端を上げて微笑んだ。

うーん。
まんまとジンさんの思い通りになっているだろうか?

鎖骨の上にキスマークも付いているし…

予約の印。



…でも、

ジンさんには彼女さん達が沢山いるって

そう思っているんだけどなあ…


私って何番目になるんだろう。

とため息をつきながら、機嫌の良い、ジンさんの車の助手席に収まった。












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