不機嫌なジェミニ
次に目がさめると、夕暮れ時だった。

またもや、私はベッドの上でジンさんに抱きしめられて眠っていたみたいだ。

横を向くと、端正な顔がある。

朝よりも驚きが少なかった私は声を飲み込み、

ジンさんを起こさないように、至近距離で観察してみる。



長い睫毛。通った鼻筋。
大きめな口に、少し、厚い唇。

ふーと私がゆっくり息を吐き出すと、

ジンさんがゆっくり私の身体を抱き直し、目を開けた。

「おはようトウコ」と口元がゆっくり微笑む。

「お、おはようございます。ジンさん近すぎです。」

「トウコはあったかくて抱き心地がいい。」

「せ、セクハラ発言ですか?」

「俺の鉄の理性に感謝したら…」と言いながら、顔を近ずけてくる。

「かっ、顔がぶつかります。」

「この状況だし、キスぐらいいいんじゃないか?」と見つめる瞳は結構真剣だ。

…昨日の夜中のキスはきのせいじゃない?

「ま、待って」

「尊敬と、憧れはいつ『恋』になる?」とジンさんの唇が動くたびに私の唇をかすめる。

「まっ、まだです」と私が顔を真っ赤にして言うと、

「ふうん。そんなに待てない気がするけど…」

「お、お待ちください!」と必死に言うと、

「この俺に待て。って言うんだな。
トウコ、必ず、俺のものになれよ。」とジンさんはふっと笑って鎖骨の上にギュッと吸い付いた。

少し痛いと思うと、直ぐに優しく舐められたみたいだ。

体の奥が微かに震える。


「…ジンさん…」と怖くなって思わず声を出すと、

「そんな可愛い声を出すな。予約で済ませてやったんだから。
他のオトコに触らせるな。いいな。」とジンさんは鎖骨の上を指でなぞってからベッドから立ち上がり私を強く見つめる。

私はコクンと頷き、赤くなって視線を外すと、

「着替えてこい。送る」と部屋から出て行った。


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