不機嫌なジェミニ
食事の後、
「今のうちに話しておこうかな。
ジン兄さんはきっと、はっきり話さないかもしれないから。
トウコちゃんもきになるでしょ?
木村 冴子との事。」と蘭子さんは少し、真面目な顔をする。

「…はい。」

「もう、7年も前の話だし、私も学生で忙しかったから、詳しくは知らないんだけど…
始まりは双子が出席したパーティーに冴子さんも出席した事からみたいね。
目立つ双子のイケメン。冴子さんはすぐに目をつけたみたい。
老舗のジュエリー会社を継ぐ予定のレン。
ジュエリーデザイナーとして頭角を表し始めた才能のあるジン。
どちらともお互いに内緒にさせて最初は2人と付き合ってたらしい。
二股がバレると、どちらも選べないって泣いて、
冴子さんに夢中だったジンが二股を許して、冴子さんの手を取った。
まあ、結婚したいって思ってたと思う。
ジンはエンゲージリングを冴子さんのためにデザインし、
その指輪は国内のコンテストでグランプリを取った。
ジンがその指輪を出して冴子さんにプロポーズしたら、
その指輪を買い取りたいといって、他の会社の社長とのエンゲージリングに使った。
まあ、二股じゃなくて3股?
ジンはキープだったってことかな。
ジンは冴子さんと別れた後、ヨーロッパに行ってデザイナーとして努力をして、
世界的に権威のあるコンテストでグランプリを取って、
日本に帰ってきて『Gemini』を立ち上げた。
以上。」

「…木村さんは…ジンさんを愛してなかったのでしょうか?」と呟くと

「さあね。私にはオトコは利用するものって思っているように感じる。」


私はジンさんの気持ちを考えると、苦しくなって涙が溢れて、慌ててゴシゴシ目を擦る。

愛し合っていると信じていた人に裏切られるって…

私が思うよりもずっとずっと、ジンさんは苦しかったはず、

もし、…自分がジンさんの立場だったら、きっと、上手く生きていられないかもしれない。
そう思うだけで…

「…」言葉が見つからず、ただ涙が流れた。

「昔のジンのために泣いてくれてありがとう」と私の頭をポンと撫でてくれる。

その手がジンさんの撫で方に似ていて、
やっぱり兄妹なんだな。と少し笑顔になった。
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