不機嫌なジェミニ
駅前のコーヒーショップでモーニングセットを注文し、並んで食べる。
背が高くイケメンのジンさんはカジュアルな服装でも目立っている。

「ジンさん、…先に電車に乗ってもいいですか?」と聞くと、あからさまに不機嫌な顔をする。

「一緒に出勤したら…きっと朝まで一緒に居たって…」

「俺と付き合ってるって知られたくないの?それに朝の電車混んでるからひとりで乗せたくないけど」

「みんなに知られると…」

「昨日、連れて帰ったのはみんなに見せるためだよ。
今更なんで隠す必要がある?知られたくない相手でもいるのか?」

「い、いいえ」と赤くなって下を向く。

…ジンさんが他の恋人に知られると困るんじゃないの?という言葉を飲み込む。


ジンさんはため息をつき、

「トウコ、俺達恋人だよな」と私の頬を撫でる。

「…ハイ」と顔を上げて返事をすると、

「じゃ、行こう」と私の手をしっかり握ってコーヒーショップを後にした。
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