タイムリープ
「姉ちゃん、お見舞いに来てくれたんだね」

私が病室に入ってきたのに気づいた翼は、すばやく手招きして呼んだ。

私は早足で、呼ばれた翼の方まで歩いた。

「お母さん」

私は閉めてあった白いカーテンを少し開けて、病室のベッドに目を向けた。 私の視界に、げっそり痩せた母親の姿が見えた。

腕には点滴がつながれており、足のむくみもひどがった。抗がん剤治療と強いストレスのせいなのか、頬がげっそりこけていた。

「お母………さん」

私は、自分の目を疑った。

私が大阪の実家を飛び出したときは、まだ母嫌は元気だった。だけど、病室のベッドで一秒ごとに命を削られて、弱っていく母親の姿が現実なんて信じられない。

「梢ちゃんかい?久しぶりだね」

こんなしんみりとした空気の中、おっとりした声が私の右隣から聞こえた。

「え!」

私は、右に視線を向けた。私の向けた視線の先に、丸イスに座った母方の祖母の姿が目に見えた。

実年齢六十九歳よりも若く見え、髪の毛は黒く染めていた。頬にシミがあるのが特徴で、老眼鏡をかけていた。
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