タイムリープ
「梢、なんか言ってくれよ。梢が飲み屋嫌だったら、別に俺は他の場所でもいいんだぜ」

彼がまた、私のことを下の名前で呼んだ。

「も、もちろんいいけど。詩織も入れて、三人で行くんだよね?」

はにかんだような笑顔を浮かべて、私は小さな声でそう訊いた。

「梢は、俺のことが嫌いなのか?」

「えっ!」

私がそう聞くと、彼が一瞬声を落としてひどく冷たい声で言った。

「えっ!」

私の口から、驚きの声が漏れた。

彼を見ると、水のように潤んだ瞳で私をまっすぐ見つめていた。

「俺は、好きな梢と二人だけがいいんだ。場所なんかどこでもいい。好きな梢と一緒にデートしたいんだ」

ーーーーーードクン!

真剣な表情を浮かべた彼にそう言われて、私の鼓動がますます加速する。

ーーーーーーこれって、彼からの告白!夢じゃないよね。

私は心の中で自問自答を繰り返し、ずっと好きだった彼からの告白にドクンと心臓が大きく跳ねた。
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