タイムリープ
「私も、優太のことが好きなの!大好きだったの!」

「えっ」

詩織は右手に握っていたオレンジ色の傘を離して、泣きながら叫んだ。

オレンジ色の傘が舗装された道に落ちて、夜空から降る激しい雨が私と詩織の体全身を濡らす。

ーーーーーー嘘でしょ。

好きな人が一緒だったことに、私はただただ驚くことしかできない。

「応援するとは言ったよ。でも、好きな人が同じだったら、応援なんかするわけないでしょ」

涙なのか雨なのか、詩織の瞳から滴が流れていた。

講義が終わってぞろぞろと帰宅する、他の学生たちが私たちの異様な光景に視線を向けている。

「詩織」

私は、友人の名前を口にした。

彼女と出会ってから私は一度もケンカなんかしたことがなく、泣いてる姿も見たことがなかった。
こんなの初めてだった。

降りしきる雨が、私と詩織の今の気持ちを表しているようだった。
< 62 / 210 >

この作品をシェア

pagetop