クールな部長とときめき社内恋愛
「そんなにかわいいことを言われるとは思ってなかった」

意外だと言いたげな彼の声に、さらに羞恥が沸き上がる。
きっと、わたしをからかうような表情で見ているんだ。

そう思って、覚悟をして顔をあげると、藤麻さんは「参ったな」と眉尻を下げて笑った。

「ますます好きになるよ、舞花のこと」

照れて困っているように見える表情、そして、ふいに名前で呼ばれたことにわたしの胸は大きく高鳴った。

「そ、それはこっちの台詞なんですけど」

「舞花、さっきよりも顔真っ赤だな」

「いいから、もう行きますよ! お昼休みなくなります!」

口もとを緩めている藤麻さんに居た堪れなくなって、わたしは早足で通路を進みだす。

「待ってくれよ」と後をついてきてくれる彼にうれしくなりながら、会社のすぐ近くにあるコンビニへと向かった。

おにぎり、サンドイッチ、サラダ、飲み物を買って戻ってくると、営業部の階にある休憩スペースで食べはじめた。

営業部は男性が多くて食堂を利用する人が多いし、今日は午後から会議があるから、喫煙室とは別になっている休憩スペースにやって来る人は今のところいない。

食堂よりは落ち着いて食べられるけど、おにぎりとサンドイッチとサラダってちょっと寂しいかな。

「今度、お弁当作ってきますね」

サンドイッチの袋を開けながら、だんだんと熱くなってくる頬を意識する。
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