クールな部長とときめき社内恋愛
どうしてわたしに藤麻さんのことを聞くのだろう。今まで話したこともなかったのに。
それに、春伸さんの視線は居心地悪く感じるし、どこか違和感がある。

わたしが藤麻さんの文句を言っていたから、もしかしてそれを怒っているのかな。
ダメだ、これ以上会話をするのは耐えられない。

「わ、わたし、帰るので……失礼します。お疲れ様でした」

そう言ったわたしは、とにかくこの場を去ろうと焦りながら歩き出した。
きっと、わたしが藤麻さんのことを気になっているって、バレてしまったと思う。
態度に出てしまったことを後悔して居た堪れなくなった。

春伸さん、本人に言ったりしないよね?
気になっていることだけじゃなく、わたしがからかわれて困っているなんて藤麻さんが聞いたら、もう近づいてくることはなくなるのだろうか。

もういい、これ以上複雑な気持ちになるくらいなら、春伸さんと話したことは気にしないようにして忘れるしかない。

息をついてそう言い聞かせたわたしは、帰る支度をして会社を出た。
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