昼下がりの情事(よしなしごと)
綿帽子に白無垢姿の美咲は本当に美しかった。
一目その姿を見た和哉は、あまりの美しさに息をするのを忘れ、しばらく固まっていたくらいだ。
美咲の着付けを担当した者も「今時、ここまで日本髪が似合う人はいない」と目を細めた。
また、「着物を着慣れてるのか、踏ん張りどころを知ってて、着付ける側との呼吸がぴったり合って着付けしやすかった」とも言っていた。
美咲は茶道など、特に着物に親しむような趣味はないのだが、成人式や友達の結婚式で着物を着る際に、なぜか着付けの人からよく言われることだ。日舞をやってましたか、とも訊かれる。
そういうこともあって、美咲は和装での挙式を選んだ。
和哉の方も、剣道をやっていたかのように姿勢がいいから、黒紋付の羽織袴姿がよく似合い、まるで江戸時代から抜け出た「サムライ」のようだった。
拝殿に向かう沿道で、二人の姿を偶然見た人たちは、ため息まじりでうっとりと見つめていた。
友人を集めてのウェディングパーティの方は、和哉の仕事の都合もあって、来月開かれる。
その後、待ちに待った新婚旅行も控えている。