昼下がりの情事(よしなしごと)
先日、生まれ育った町の神社で、和哉と美咲が結婚式を挙げた。
最初、二人きりで挙式するつもりだったが、美咲が実家に帰って、両親に「今度は花嫁衣装を着て、ちゃんと結婚式をする」と報告した。
すると、突然、母親が堰を切ったように「美咲の花嫁姿が見たい!おとうさんが見るなって言うのなら、離婚します!!」と言いだした。
離婚されたら困る父親がとうとう折れた。
和哉もちゃんと美咲の両親に会って、日本の美しき伝統文化「お嬢さんをください」をやったあと、伝家の宝刀「最敬礼」を存分に発揮した。
和哉の方も、母親と再婚相手と妹が参列してくれた。実の父親からは祝電が届いた。
和哉の母と美咲の母は、会うなり「あらー、お久しぶり~!元気にしてた?」と言い合っていた。小学校のPTAの行事以来の再会である。
家族が参列して二人きりじゃないと知った香里は「友人代表」として、佳祐を引っ張って来てくれた。
でも香里が「あー!これがパワースポットの御神木ねー!?」とそこら中の木に抱きついてばかりいるので、佳祐が「抱きつくならこっちにしろ」と彼女を引き寄せ、神社の境内にもかかわらず、チュッとキスをした。
香里は「さすが、◯原さん推奨の超パワースポット!もう御利益が!?」と感激した。
実は、人前でこういうのを一度やってみたかったのだ。
佳祐はというと、なんだか子どものようにはしゃいでるわが妻がかわいくて愛おしくて、ついやってしまった。神聖な境内なので、バチが当たらないかと青くなった。