遠い昔からの物語

闇の中でもわたしの目に光るものが見えたのか、中尉は不安げに尋ねた。

わたしは、ぶんぶんと首を振った。

それは、自分でも思いがけないほど、激しいものだった。

「……ほうか」

中尉は、ほっとした声で呟いた。

そして、首を振った拍子にあふれ出て、頬を伝っていくわたしの涙を、親指でそっとぬぐった。

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