遠い昔からの物語

義彦さんの向こうに、床の間に置かれた短剣が見えた。

わたしはそこへ赴いて跪き、短剣を両手でしっかりと取り上げた。

そして、義彦さんの(もと)へ戻って跪き、短剣を掲げた。

義彦さんは右手でそれを受け取り、左腰へ吊るした。その姿は紛れもなく「海軍士官・間宮 義彦中尉」だった。


(ふすま)が豪快に開いて、神谷中尉が顔を見せた。

彼はもうランニングシャツにズボン姿ではなかった。間宮中尉と同じ、白い軍服姿に短剣を()げていた。

「貴様ら、支度できたか……もう表に車が来とるぞ」






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「遠い昔からの物語」
第一部 「初めて」〈 完 〉
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