遠い昔からの物語

おれが神谷のコップに麦酒(ビール)を注ごうとしたら、もう瓶は空になっていたので、今度は一升瓶の栓を開けた。

とくとくとく……と奴に酒を注いでやっていると、

「あぁーあ、せっかくの休暇やっていうのに、なんでこんな仕事の話しとうんやろ……そうやっ」

突然、打って変わって明るい声になった。

「夕べは彼女になにしようたんや」

神谷はニヤニヤしだした。

「えらい騒がしなったから、薫子が、なにか彼女に遭ったんやないか、って乗り込もうとしたんやで。おれは、無粋なことすんな、って云うて必死で止めたんや。感謝せえよ」

おれは奴の言葉を無視した。

そのとき、(ふすま)がスーッと開き、廣子たちが風呂から戻ってきた。

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