遠い昔からの物語

海兵時代「江田島で幽閉」されていた鬱憤が一気に噴出したのはその頃だ。

神谷と一緒に、一通りの「悪さ」はした。

命をかけた訓練から解放された賜暇(ほうか)には、酒を浴びるほど呑み、俸給(ほうきゅう)をごっそり賭けてうつつを抜かし、芸者を上げてドンチャン騒ぎをした。

女郎屋に入ったら部屋が一つしか空いておらず、仕方がないので間に衝立(ついたて)を置いて、それぞれ(おんな)を抱いたこともある。

贔屓の芸者に子を孕ませかけて、ヒヤッとしたこともあった。

しかし、女には心から溺れることはできなかった。

だから、女たちはいつも短期間で去って行った。

いつか見た、あの強い眼差(まなざ)しが、おれの心のどこかに棲みついて離れないのを、感じ取ったからかもしれない。

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