意地悪な彼ととろ甘オフィス


「もう頼んであるので大丈夫です。山下さんは?」
「俺もさっき頼んだ。ここ、アルコールの種類がたくさんあって迷わない?」
「ですよね。私も迷って……ああ、これにしました。ミモザ」

山下さんが開いたメニューを覗きこんで指を指す。

「オレンジ系のか。俺、フルーツ系って飲んだことないなぁ。甘くなかったら教えて。次頼んでみる」
「わかりました」

クスクスと笑っていると、不意に視線を感じる。
視線を移せば、斜め前に座っている成瀬さんと目が合いすぐに逸らされた。

一瞬だけぶつかった眼差しは不機嫌そうで、最初、この部屋に入ってきた私を見たときを思い出す。
目が合うなり、嫌そうな顔をされたっけと。

総務課が相手だって知っていても、私が総務課だとまでは知らなかったからオーケーしたのかもしれない。須永先輩、美人だし。

グラスを取り、残り少しとなったビールを飲みこむ。

口の中に広がる、いつまで経っても慣れない苦みを感じながら、成瀬さんがここまであからさまに私を嫌い始めたのはいつからだっただろうと考えていた。





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