意地悪な彼ととろ甘オフィス


もともと私と響哉くんは仲良しだった。

家が隣同士で年齢も同じだったから、それこそ幼稚園からずっと一緒だった。幼稚園バスの席も隣。クラスも同じ。

小学校に上がっても中学校に上がってもそれは変わらなかった。

懐こい性格の響哉くんは、思春期をむかえてもなにかと私にまとわりついてきて、いつも傍にいる存在だった。

『明日香。一緒に帰ろ』

別々の部活に入ったのにも関わらず、響哉くんはいつも校門前で私を待ち、家までたわいない話をして帰るのが当たり前になっていた。

そんななか、響哉くんの人気が爆発するような事件が起こる。

中学二年時の体育祭。
クラス対抗リレーにアンカーとして出場した響哉くんは、言葉通り〝ごぼう抜き〟を見せた。

一位でゴールテープを切った瞬間にうちのクラスの優勝が決まり、そこに男子がかけよる。

その時、響哉くんが浮かべていた弾けるような笑顔は私から見ても誰よりもカッコよかった。

色素の薄い、茶色いサラサラの髪が風に揺れ、その下ではアーモンドみたいな形をした瞳がキラキラしていた。

響哉くんの容姿は、テレビの向こう側の人と並んでも引き目をとらないほどに整っていて、そういうオーラもあった。

私はその時、響哉くんを幼なじみという立ち位置から、初めて一歩引いて眺めたけれど、すごく綺麗な男の子だと思った。

そんなことがあってから、元々あった響哉くんの人気は急上昇して……そして、私の友達も響哉くんが好きだと頬をピンク色にするようになった。

私と響哉くんは、その頃もまだ毎日一緒に登下校していたけれど、幼なじみという関係でしかなかった。
でもそんな関係は、はたから見れば勘違いしてしまうようで……。

『別れてよ。私の方が成瀬くんと似合ってる。あんたなんかじゃ不釣り合いだって自分で気づかないの?』

呼び出されて行ってみれば、同じような台詞を吐き捨てられるようになった。



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