ライアーピース
Piece16



「う、産まれたぁー!」


「若葉、よく頑張ったな」


陸の結婚式から間もなく、
私は出産した。


「おめでとうございます。
 元気な男の子ですよ」


「男の子かぁ」


歩夢は嬉しそうに楓を見つめる。


私が楓に手を伸ばすと、
楓はその指を小さな手で握った。


ああ、私と歩夢の赤ちゃんだ。


こんなにもあったかくて、
こんなにもかわいい楓。


私、こんなに幸せでいいのかな?


罰が当たりそうで少し怖い。


そんな私の嫌な予感は的中することになる。













「単身赴任?今度はどこに?」


楓にミルクを飲ませている時だった。


歩夢はスーツを脱ぎながら話し始めた。


「アメリカ。今度は1年か2年」


「えっ!?そんな急に・・・」


楓が生まれて半年が経った今、
歩夢は前より上の役職に就いたため、
出張が多くなっていた。


だけど、アメリカに
1年くらいだなんて初めて・・・。


不安そうな顔をした私に、
歩夢は優しく笑いかけた。


「ごめんな。大事な時に
 一人にしちゃうけど、
 出来るだけ早く帰るようにするから」


「うん・・・」


「楓~。ママと二人で
 待っててな~?」


楓は歩夢の言葉が分かったみたいに、
笑い始めた。


その顔を二人で見ていると、
とても落ち着く。


楓がこの不安を取り除いてくれるかのように、
楓は笑い続けた。


そうしているうちに、
歩夢の出発の日が訪れた。





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