恋愛ノスタルジー
凌央さんの描いた赤の画。

目まぐるしくあの何種類もある赤を思い浮かべるも、正解なんて分からない。

息を飲む私を、美月は覗き込んだ。

「あなたは、あなたを一番大切にするべきよ。さあ、私もう行くわ。でも逐一報告するのよ?じゃあね!」

今度こそ美月は去っていってしまい、後には私とハイボールだけが残った。


****

ひとりは飲むペースが上がる。

空のグラスを両手に囲い、中の氷に視線を落としたその時だった。

「彩!」

引き戸が開いたと思ったら、圭吾さんの声が響いた。

喧騒を一蹴し、辺りを払うような綺麗な姿。

そんな彼の瞳が、店内を見回し私を探している。

「は、はい!」

反射的に立ち上がった私を見つけた圭吾さんは、大股でみるみるこちらに近づいてきた。

「彩っ」

それから、焦りの色を隠す様子もなく私の腕を掴んだ。

「一緒に来ている男たちは何処だ」

「へ?……私……ひとりですよ?美月は帰っちゃって、」

私が戸惑いながらこう言うと、圭吾さんは一瞬ポカンとした後、大きく息をついて頭を左右に振った。

「あの、圭吾さん。美月になにを……」

言われたんですか?と聞きたかったのに、圭吾さんは私の質問を遮ると独り言のように呟いた。

「もうやめだ、こんな事は」

「え?」

「帰ろう。話があるんだ」
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