恋愛ノスタルジー
「……何ですか?」

アッと思ったものの手遅れだ。

自分で言っておいてなんだけど、思いの外私の声は冷たく響いた。

焦って圭吾さんを見上げると、彼は一瞬眼を見開いた後、すぐにその瞳を伏せた。

朝の日差しが彼の端正な頬に睫毛の影を作り、なんだか悲しげだ。

……ど、どうしよう。

その時、圭吾さんが再び私を見つめた。

「朝食を作ってるんだ。一緒に食べないか?」

「結構です」

……まただ。

昨日の事があり、圭吾さんに向き合えない自分がいる。

お腹は空いているけど……でもだって、一緒に朝食なんてどんな顔をしていればいいの?

目まぐるしくそう考えるも返事を引き伸ばすのは不自然だと思った。

その結果、秒速で断るというなんとも冷ややかな対応となってしまいチクリと胸が痛む。

罪悪感はあるけど……やっぱりどうしても昨日の怒りや悲しみを無かったことに出来ない。

圭吾さんは小さく「わかった」と言うと調理器のスイッチをオフにした。

またしても私たちの間に冷たい空気が流れ込む。

圭吾さんが調理台に視線を落としたのをいいことに、私は彼を盗み見た。

するとその時、太陽光線が何かをキラリと反射した。

ん?

凝視すると圭吾さんの髪から再びポトリと光が落ちる。

首にタオルを引っ掛けたままのその姿は、どうやらシャワーを浴びた後なのだろう。

……ちゃんと髪を拭いてないんだ。

だから定期的に髪を伝って水が滴っているんだ。

……もう。

子供じゃないんだから放っておけばいいのに、見て見ぬフリが出来ない。

風邪を引いたらとか、熱が出たらとか、また倒れたらとか、色々と心配してしまうのを止められない。
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